フルアクセスを切っていれば、キーボードは入力内容を見られないのか
フルアクセスを切っても、キーボードが打鍵内容を受け取ること自体は止まりません。それが止まったらキーボードとして機能しないからです。この権限が実際に取り上げているのは、受け取ったものをどこかへ送る手段のほうです。
キーボードを入れて、入力内容がすべて送信される可能性があるという警告を見て、念のためフルアクセスは切ったままにした。そのあとで、もう少し静かな疑問が出てきます。切っておけば、そもそもキーボードは打った内容を見られないのか。それとも、見るほうは見たうえで、別の何かだけが止まっているのか。キーボードに文章を預ける前にはっきりさせておきたい話ですし、正直に答えるなら「完全に安全」でも「完全に筒抜け」でもない、もう少し具体的な答えになります。
どのキーボードも必ず受け取っているもの
キーボードの仕事は、指のタップを入力欄の文字に変えることです。押されたキーを受け取らずにその仕事をこなす方法は存在しません。何か別の権限に付随して覗けてしまう、という話ではなく、それが機能そのものです。これは純正キーボードでも同じですし、フルアクセスが入っていても切れていても同じです。つまり「キーボードは打った内容を見られるのか」という問いへの答えは、動作しているキーボードである限り常に「見ています」になります。フルアクセスはもともとそこを管理するスイッチではありませんでしたし、原理的にそういうスイッチは作れません。打鍵を受け取れないキーボードは文字を打てないからです。
フルアクセスが本当に管理しているもの
この権限が覆っているのは三つです。サーバーへ到達するためのネットワークアクセス、システムのクリップボード、そしてキーボードの親アプリとの共有ストレージ。どれも「打鍵内容を見ること」ではありません。それはすでに前提として起きています。三つをまとめると、要するにデータをどこか別の場所へ動かす能力です。とりわけネットワークアクセスは、端末の外へ送り出すための唯一の経路で、これがなければ拡張はどのコードからも、どんな理由でも、インターネットに出られません。
見落とされがちな一点
キーボード拡張は、フルアクセスが管理する共有ストレージとは別に、自分専用の小さな保存領域を端末上に持っています。この領域はフルアクセスの対象外です。もともとこの権限が想定していた範囲ではないからです。したがって理屈のうえでは、作りの悪いキーボードや悪意のあるキーボードが、フルアクセスを一度も要求しないまま、打たれた内容を自分の保存領域に書き溜めることはありえます。ここは曖昧にせず、はっきり知っておいたほうがよい部分です。フルアクセスが本当に手を触れていない唯一の箇所だからです。
ただし、書き溜めたあとにできることはありません。ネットワークアクセスがない以上、送る先のサーバーもなく、発行できるリクエストもなく、バックグラウンドでのアップロードもありません。仮に記録が存在しても、行き場がなく、端末から出る手段もない状態です。これは実質的な意味のある制限です。ただし「キーボードは入力内容を見られない」という制限ではない、というだけです。
では切っておくことに意味はあるのか
あります。しかも、実際上いちばん重要な部分に効いています。iOSの警告文が本当に想定している事態、つまりキーボードが黙って入力内容をどこかのサーバーへ送る、という筋書きにはネットワークアクセスが必要で、そのネットワークアクセスにはフルアクセスが必要です。切っておくことで悪いキーボードが良いキーボードに変わるわけではありませんが、記録した何かを行動に移すための唯一の仕組みは取り除かれます。サンドボックスの中に取り残された記録と、端末から出ていく通信とでは、リスクの性質がまるで違います。
スイッチより多くを教えてくれる確認項目
フルアクセスだけでは端末内の記録まで否定できない以上、このスイッチを答えのすべてと考えず、判断の前にいくつか確認しておく価値があります。
- App Storeのプライバシー表示に何が書かれているか。データを収集していないという申告は、フルアクセスのスイッチ単体よりも強い手がかりです。
- 開発元が、要求する権限の用途を具体的に説明しているか。「貼り付けボタンに必要」は確かめられますが、「すべての機能を使うために必要」は確かめようがありません。
- そもそもサーバーを持つ設計なのか。送り先がない作りなら、最悪の場合でも送るところがありません。
なぜ同じ警告がすべてのキーボードに出るのか
この疑問のきっかけになる強い調子の文面は、あなたが入れたキーボードへの評価ではありません。クラウド同期を行うキーボードにも、見た目を変えるだけの小さなキーボードにも、iOSは一律に同じ文言を出します。フルアクセスが入った時点で、解放された機能のうちどれを実際に使うかを、システムの側からは確かめられないからです。だからこの警告を、まだ調べていないキーボードに対する肯定的な材料としても否定的な材料としても読まないほうがよい、ということになります。中身が何であれ、書かれていることは同じです。
よくある質問
フルアクセスを切れば、キーボードは入力内容を見られなくなりますか。
なりません。純正を含めどのキーボードも、動作するためには押されたキーを受け取る必要があります。これはフルアクセスとは無関係で、止めてしまえば文字入力そのものが成り立たないため、切り替えられる種類のものではありません。
フルアクセスを切っていても、入力内容を記録されることはありますか。
技術的には、拡張が持つ端末上の専用領域への記録は起こりえます。その領域はフルアクセスの対象外だからです。切っておくことで実際に防げるのは、その記録が外へ出ていくことです。ネットワークアクセスがなければ、端末の外へ送る手段がありません。
フルアクセスが不要かどうかだけ確認すれば安全と判断できますか。
意味のある確認ではありますが、それだけでは足りません。App Storeのプライバシー表示と、要求される権限について開発元が示す具体的で検証可能な理由を合わせて見るほうがよく、スイッチひとつを結論にしないことが大切です。
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