キーボード着せ替えアプリは本当にキーボードを変えているのか
App Storeの「キーボード」アプリの中には、キーボードに一切触れないものがあります。画像を生成して壁紙に設定させ、変わっていないキーをその前に置くだけ。二十秒で見分ける方法があります。
App Storeで「キーボード 着せ替え」と検索すると、性質がまったく違う二種類の製品が同じ一覧に並んで返ってきます。しかも、ストアの説明を読んでもどちらなのかは分かりません。一方はキーボード拡張を追加する製品です。キーは本当に別の色になり、それがあらゆるアプリに及びます。描いているコードが入れ替わったからです。もう一方はキーボードにまったく触れません。画像を生成し、それを壁紙に設定するよう案内し、灰色のままのキーの背後に見えているその絵をテーマだと思わせます。
キーボードアプリが必ずやらなければならない一つのこと
iOSにおいて、実際に入力する対象を変える方法はひとつしかありません。キーボード拡張を同梱し、利用者の手で追加してもらうことです。手順は、設定Appの「一般」→「キーボード」→「キーボード」→「新しいキーボードを追加…」と進み、「他社製キーボード」の欄に出てくるアプリ名を選ぶというもの。この手順が存在するのは、iOSが拡張を既定で無効のまま保持しているからです。追加が済んで初めて、その拡張がキーを描く担当になり、背景も、キーの色も、押した瞬間の見え方も、音も、文字を打つすべてのアプリで自分の設計どおりに決められるようになります。
逆にいえば、アプリがその作業を一度も求めてこないなら、つまり設定を開くボタンもなく、新しいキーボードを追加という案内もなく、キーボードの一覧に増えるものもないなら、それはキーボードになっていません。画面に表示されたものが何であれ、それは別の何かです。
壁紙で見せかける手口
その別の何かは、たいていの場合ただの画像です。アプリはキーの枠線、文字、配色といったキーボードらしい見た目の絵を生成し、ロック画面やホーム画面の壁紙、あるいはウィジェットの背景に収まる大きさで書き出します。利用者はそれを壁紙に設定する手順へ案内され、場合によっては対応アプリでキーボードを半透明にして絵を透けさせるよう指示されることもあります。スクリーンショットを撮ってSNSに載せれば、確かに着せ替えたキーボードそのものに見えます。しかし実際に入力してみれば違います。その下にあるのは変わっていない標準のキーで、描画の過程がアプリを通ったことは一度もないからです。
決め手はキーを押した瞬間の反応です。本物のテーマならキーは目に見えて反応します。浮き上がる、暗くなる、光るなど、そのテーマが定めた押下状態に切り替わります。拡張が指の動きに合わせてそのキーを描き直しているからです。壁紙の場合、指の下では何も変わりません。画像は入力を認識できません。キーボードの背後に置かれた絵であって、キーボードではないということです。
信用する前の二十秒の確認
- アプリを入れて、最初に指示された手順をそのまま実行します。
- 設定Appを開き、「一般」→「キーボード」→「キーボード」と進みます。
- 「新しいキーボードを追加…」をタップし、「他社製キーボード」の欄を確認します。
- そこにアプリ名があれば、タップして追加してください。本物のキーボード拡張なので、宣伝されていた見た目はキーボード自身が描けるものです。
- その一覧のどこにもアプリ名がなければ、そのアプリはキーボードとしての機能をiOSに一度も要求していません。表示されたものは壁紙かウィジェット、あるいは単なる画像です。
この確認はレビューを読むより短時間で済みますし、レビューと違って判断を誤りようがありません。
なぜ壁紙という近道を選ぶアプリがあるのか
本物のキーボード拡張を作るのは、画像を一枚生成するより手間がかかります。表示用のコードを持つ二つ目のターゲットが必要になり、そこには厳しいメモリ制限がかかり、すべてのキーの押下状態を処理しなければなりません。そのうえ利用者に追加の手順を踏んでもらう必要があり、一定の割合はそこで離脱します。壁紙なら静的な画像一枚と説明文だけで済み、公開も早く、そもそも存在しない拡張のクラッシュで審査に落ちることもありません。
代償として、壁紙は一か所にしか置けません。ウィジェットの背後か、たまたま背景を透過して描画するアプリの背後だけで、実際に文字を打つすべてのアプリの中には入り込めません。キーを押しても音は出ません。押した瞬間に動くコードが存在しないからです。気分に合わせてテーマを切り替えることもできません。そのたびにロック画面かホーム画面を手で変更する必要があり、それはもうキーボードの問題ではなく壁紙の問題です。
本物の拡張が描けるもの、そのために必要な権限
ここまでに挙げた描画のどれにも、iOSの特別な権限は要りません。キーボード拡張は、設定で追加されているという事実だけで、背景・キーの塗り・押下状態・角の丸み・文字色・音を自分で決められます。ネットワークとシステムのペーストボードを管理する「フルアクセス」は、そのいずれにも関係しません。したがって「このアプリはフルアクセスを求めてくるか」は判定材料になりません。「新しいキーボードを追加の一覧に出てくるか」が判定材料です。
よくある質問
ストアのプレビュー画像に完璧なテーマのキーボードが写っています。動作している証拠になりますか
なりません。スクリーンショットからは、キーが実際の押下に反応したのか、それとも単なる絵なのかを判別できません。メッセージなど実際に入力する場所でキーを押してみてください。本物のテーマならキーは目に見えて反応し、壁紙なら何も変わりません。
正当なキーボード着せ替えアプリにはフルアクセスが必要ですか
必要ありません。色や模様、アニメーションを描くことはキーボード拡張の通常の処理で、特別な権限を伴いません。フルアクセスが扱うのはネットワーク接続とシステムのペーストボードだけなので、その有無は本物のキーボードかどうかの判断材料になりません。
壁紙型の着せ替えアプリで文字を入力することはできますか
できません。そもそもキーボードではなく画像だからです。入力しているのは実際に有効になっているキーボード、つまり標準キーボードか本物の他社製キーボードのほうで、壁紙は設定した一か所でその背後に見えているだけです。
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